ROI・ROAS・CPAの違いとは?同じ事例でわかる計算式と使い分け
2026年3月17日
著者: 与謝秀作
ROI・ROAS・CPAの違いは、広告を「利益」「売上」「獲得単価」のどこから評価するかです。どれか一つが良ければ成功とは限りません。売上が増えても原価が高ければ利益は残らず、問い合わせ単価が安くても受注につながらなければ投資を回収できないためです。
広告運用ではCPAで獲得効率を追い、ROASで売上との関係を確認し、定義をそろえたROIや利益額で継続・増額を判断します。この記事では同じ仮定の数値を使い、3指標を混同せずに計算する方法を説明します。
ROI・ROAS・CPAの比較表
指標 | 何を評価するか | 基本式 | 単位 | 単独では分からないこと |
|---|---|---|---|---|
ROI | 投資に対して得た利益 | 投資による利益÷投資額×100 | % | 利益・投資額の定義が違う施策との単純比較 |
ROAS | 広告費に対して得た売上 | 広告に帰属する売上÷広告費×100 | %または倍 | 原価・手数料を引いた利益 |
CPA | 成果1件を獲得する費用 | 広告費÷成果件数 | 円/件 | 成果の質、売上、継続率 |
ROIは企業や用途によって費用の範囲が異なります。「利益」が広告費を引く前か後か、投資額に制作費や人件費を含めるかを、計算前に決めることが重要です。ROASも広告費だけを分母にした値と、代理店費用等を含めた社内管理値を混ぜないようにします。
同じ広告を3指標で計算する
以下は計算方法を示す仮想例です。広告経由の購入が50件、売上100万円、商品原価60万円、広告費20万円だったとします。ここでは返品・送料・決済手数料・固定費を除き、50件は購入回数として数えます。
項目 | 金額・件数 |
|---|---|
広告に帰属する売上 | 1,000,000円 |
商品原価 | 600,000円 |
広告費控除前の粗利益 | 400,000円 |
広告費 | 200,000円 |
広告費控除後の利益 | 200,000円 |
購入件数 | 50件 |
ROASは500%です。100万円÷20万円×100なので、広告費1円に対して売上5円という意味になります。利益が5倍になったわけではありません。
CPAは4,000円です。20万円÷50件なので、購入1件を得るために使った広告費が4,000円です。問い合わせをCVにする広告のCPAとは、成果地点が違うため直接比較できません。
この条件での広告ROIは100%です。広告費控除後の利益20万円÷広告費20万円×100と計算します。すでに広告費を引いた利益から、もう一度広告費を引かないようにしてください。
ただし、ここで算出したのは広告に帰属させた売上を使う管理値です。その売上のすべてが広告によって新しく生まれたとは限りません。広告の増分効果まで評価する場合は、広告を出さなかった場合との差を検証する必要があります。
ROAS100%は通常、損益分岐点ではない
ROAS100%は、売上と広告費が等しい状態です。原価などが発生する事業では赤字になります。上の例のように粗利率が40%なら、売上のうち広告費に充てられるのは40%までです。
広告以外の追加費用と固定費を除いた単純モデルでは、次の式になります。
損益分岐ROAS(%)=100÷粗利率(小数)
粗利率40%なら100÷0.4=250%。ROAS250%で、粗利益と広告費が等しくなります。送料・決済手数料・返品等を別途負担するなら、それらを引いた限界利益率で計算するか、費用として別に加えます。
広告費控除前の利益率 | 単純モデルでの損益分岐ROAS |
|---|---|
20% | 500% |
30% | 約333% |
40% | 250% |
50% | 200% |
利益を残すには損益分岐点より高い目標が必要です。具体的な計算はROAS計算式と損益分岐点の求め方で扱います。
許容CPAを売上ではなく利益から逆算する
購入1件の売上が2万円、広告費控除前の粗利益が8,000円なら、単純モデルでの限界CPAは8,000円です。1件につき3,000円の利益を残したい場合は、CPAの目標上限を5,000円と置けます。
問い合わせ獲得では、受注率も必要です。仮に受注1件の広告費控除前利益が10万円、問い合わせから受注への転換率が10%なら、問い合わせ1件あたりの期待利益は1万円です。ここから営業対応費用や残したい利益を引いて許容CPAを決めます。失注率や受注までの期間が違う媒体を、問い合わせCPAだけで選ばないようにします。
継続購入がある場合はLTVも参考になります。ただし売上LTVと利益LTVを区別し、獲得月別の実績、解約・返品、回収期間を確認します。まだ観測していない将来売上を、確定した利益として扱わないことが大切です。
実務では「計測→獲得→売上→利益」の順に確認する
- CVの地点を決める。購入、問い合わせ、商談を同じ列で集計しない。
- 広告費、売上、CVの対象期間・税込税抜・計測条件をそろえる。
- CPAを目標と比較し、成果件数が十分か確認する。
- ROASと客単価を見て、安い成果が売上にもつながっているか確認する。
- 原価、運用費、対応費を加え、利益額とROIで増額・継続を判断する。
たとえばCPAが改善してROASが悪化したときは、低単価商品の購入が増えた可能性があります。ROASが改善して利益が減ったときは、値引きや高原価商品の構成比を確認します。指標同士が食い違うときにこそ、理由を分解して考えます。
よくある質問
ROIとROASは高い方がよいですか?
同じ定義・条件で比較するなら高いほど効率は良いといえます。ただし広告を絞れば比率が上がっても、利益の総額が減ることがあります。比率と、売上・利益・獲得件数の総量を一緒に見てください。
CPAと顧客獲得単価は同じですか?
CPAのCVが新規顧客獲得で、費用範囲も同じなら近い値になります。一般に顧客獲得単価では営業費用等を含める場合があるため、広告費のみのCPAと混同しないよう定義を記載します。
広告媒体とGA4の数字が一致しないときは?
帰属モデル、計測期間、ビュースルーの扱いなどが異なる可能性があります。片方を直ちに誤りとせず、条件を確認し、予算判断に使う基準を決めます。アトリビューション分析も参考にしてください。
3指標を並べる目的は、数字を増やすことではなく、売上と利益につながる広告へ予算を配分することです。まず自社のCVと費用範囲を1行で定義し、同じ条件の計算表から運用を始めましょう。


