マーケティングKPIツリーの作り方|計算例と管理シート

2026年5月7日

著者: 与謝秀作
マーケティングKPI設計|KGI・KPIツリー・SMARTな指標選定

マーケティングKPIは、事業目標へ近づいているかを判断し、次の行動を決めるための指標です。設計では、最終目標、そこへ至る行動、計算方法、担当者、見直す条件をそろえます。数値を多く並べるだけでは、成果との関係も責任範囲も曖昧になります。

KGIとKPIの基本的な違いはこちらの解説を参照してください。本記事では、目標を計算と運用につなげる方法を扱います。

1.売上目標を同じ単位で分解する

次は架空のB2B事業の計画です。対象期間に獲得するリードを、十分な営業期間を設けて追跡するものとします。売上目標1,000万円、受注単価50万円、商談からの受注率25%、有効リードからの商談化率20%を仮定します。

段階

計算

必要数

受注

1,000万円÷50万円

20件

商談

20件÷25%

80件

有効リード

80件÷20%

400件

ここで単価は「受注1件当たり」であり、顧客1人当たり、注文1回当たりなどと混ぜません。既存契約の売上を目標に含めるなら、新規獲得に必要な売上だけを取り出して計算します。

転換率は実績をもとに置く仮定で、保証ではありません。商談化率が10%なら必要リードは800件に変わります。獲得数だけを増やす前に、対象顧客、営業の処理能力、受注までの日数を確認しましょう。

2.残高と期間中の増減を混同しない

継続課金事業のARRは、一定の定義で年換算した継続収益の規模です。期間中の新規獲得額だけでは期末ARRを表せません。為替・契約変更等の調整を別途扱う単純な例では、次のように整理できます。

期末ARR=期首ARR+新規ARR+拡張ARR−縮小ARR−解約ARR

項目

架空の金額

期首ARR

1,200万円

新規ARR

+300万円

拡張ARR

+120万円

縮小ARR

−60万円

解約ARR

−180万円

期末ARR

1,380万円

純増は180万円ですが、期末残高は1,380万円です。ARRを実際の当期売上、入金額、単発の初期費用と同一視しないでください。年換算の方法、開始日、契約期間、除外項目は経理・事業側と統一します。月次の値を使う場合は月単位で計算し、途中で年次の解約率を掛けないようにします。

3.指標辞書を作る

項目

記入例

指標名・目的

有効問い合わせ数:営業対応できる需要の把握

集計対象

本番サイト、対象言語、重複を除く問い合わせ

成功条件

正常送信し、対象業務の相談と確認できたもの

除外

テスト、営業売込、同一案件の重複

計算・期間

月内獲得数。商談転換は獲得月別に60日追跡

データ・担当

フォーム記録と営業台帳、営業企画担当

品質確認

成功ログと集計の照合、欠測・重複の確認

「CVR」だけでは分母が分かりません。問い合わせ件数÷セッション、問い合わせが起きたセッション÷全セッション、有効問い合わせ÷フォーム開始は別の指標です。指標名の近くに分子・分母を書き、レポート間で意味を変えないことが重要です。

4.先行指標と結果指標を組み合わせる

PVやメール配信数は活動規模を示しますが、それだけで売上貢献は決まりません。獲得数と有効率、商談数と受注率、売上と粗利益のように、量と質を組み合わせます。担当者が変えられない結果だけを課すのではなく、改善できる行動と結び付けます。

状況

確認

行動の候補

リード増、有効率低下

対象・訴求・重複

獲得条件と広告表現を調整

有効リード増、商談停滞

未対応・対応日数

引き渡しと担当負荷を見直す

商談増、受注率低下

案件の成熟度・失注理由

比較期間をそろえ提案を見直す

売上増、利益低下

値引き・制作・支援費

採算を含めて目標を調整

5.週次で異常、月次で仮説を見直す

週次はデータ欠落、対応漏れ、急変と施策の進捗を確認します。月次は同じ獲得集団を同じ経過日数で比べ、仮定した転換率と営業期間を見直します。今月の受注を今月のリードで割ると、別の集団を混ぜる場合があります。

記入シートには、目標__/現状__/差__/考えられる原因__/確認する証拠__/次の施策__/担当__/期限__/継続・変更条件__を残します。

計測の実装や定義が変わった日は必ず注記してください。数字が伸びた理由を一つの施策に即断せず、価格、顧客構成、季節性なども確認することで、KPIを報告用の数字から意思決定の道具に変えられます。

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