LTVとは?売上・粗利益ベースの計算とCAC比較の注意点

2026年3月28日

著者: 与謝秀作
 LTV(顧客生涯価値)とは?計算方法3パターンとLTV向上の具体的施策

LTV(顧客生涯価値)は、顧客との取引期間を通じて得られる価値を表す指標です。ただし、売上を使うLTVと、原価を引いた粗利益を使うLTVは別物です。何を価値として数え、実績か予測かを明記することから始めます。

広告や営業に使える費用を判断する場合、売上だけでなく粗利益・貢献利益に基づくLTVと、回収までの時間を見る必要があります。商品原価やサポート負荷が高い顧客は、売上が大きくても利益が大きいとは限りません。

目的に合わせて3つの計算方法を選ぶ

方法

式・集計

向いている場面

購入型の概算

平均購入単価×期間内の購入回数×継続期間

リピート購入の仮説を立てる

継続課金型の概算

同じ期間のARPA÷顧客解約率

単価と解約が比較的安定した契約

コホート実績

同時期に獲得した顧客の累積売上・粗利益÷獲得顧客数

獲得施策や初期体験の比較

ARPAは1アカウントあたりの平均売上です。顧客単位で分析するのか契約単位なのかをそろえます。売上解約率と顧客解約率を無条件に置き換えないでください。

購入型の計算例

以下の数値はすべて説明用です。平均単価5,000円、年3回購入、継続2年なら、売上LTVは5,000×3×2=30,000円です。粗利率40%が一定なら、粗利益LTVは12,000円です。

ここには顧客獲得費用をまだ引いていません。返品、値引き、送料、決済費用の扱いを定義し、利益ベースで比較する場合は全経路で同じルールにします。継続2年が予測なら、実績の2年累計と明確に区別します。

継続課金型:解約率を使う式の前提

月次ARPA1万円、月次顧客解約率2%、粗利率80%なら、売上LTVは1万円÷0.02=50万円、粗利益LTVは40万円です。月次の売上と月次の解約率を組み合わせます。

月次解約率の仮定

売上LTV

粗利益LTV、粗利率80%

1%

100万円

80万円

2%

50万円

40万円

4%

25万円

20万円

これは単価と解約確率が将来も安定する単純モデルです。初月に解約が集中する、契約が年単位、値上げがある、拡張売上が大きい場合などには合わないことがあります。解約0%の月を入れて「LTVは無限」と判断せず、観測期間や顧客数を増やすか、期間を区切った実績を使います。

コホートで実績を比較する

1月獲得の100顧客が6カ月で売上600万円・粗利益420万円を生んだ場合、6カ月実績は顧客あたり売上6万円、粗利益4.2万円です。継続顧客だけを分母に残すと、途中で解約した顧客を除外して値が高くなるため、獲得時の100顧客を基準にします。

2月獲得群と比べるなら、両方とも獲得後6カ月時点の値にそろえます。この数字は「6カ月累計」であり、将来の取引全体を観測済みという意味ではありません。獲得経路、プラン、対象顧客別に分けると改善箇所を探しやすくなります。

LTV/CACで二重控除を避ける

CACは獲得に要した販売・マーケティング費用を、新規顧客数で割った値です。LTV/CACを計算するなら、通常はCACを引く前の粗利益LTVと比較します。LTVからCACを引いておき、さらにCACで割ると、別の指標になってしまいます。

例えば粗利益LTV40万円、CAC10万円ならLTV/CACは4倍です。月次粗利益が8,000円で一定なら、単純なCAC回収期間は10万円÷8,000円=12.5カ月です。高い比率でも資金回収が遅い場合があります。「3倍なら健全」といった一律の基準だけで投資を決めないでください。

LTVを改善する順番

初期利用のつまずきを減らす、顧客が期待した成果を得られているか確かめる、解約理由を分類する、必要な顧客へ追加提案する、という順で仮説を立てます。値引きで継続率が上がっても粗利率が落ちるなら、利益LTVで再評価が必要です。

改善施策には、対象群、変更内容、獲得後の観測期間、継続率、累計粗利益、サポート費用を記録します。全体平均が上がったときも、施策の効果か、高単価顧客の割合が増えただけかを切り分けましょう。

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