ファイブフォース分析のやり方|業界の範囲・根拠・記入例
2026年5月2日
著者: 与謝秀作
ファイブフォース分析は、業界で利益を得にくくする圧力を、既存企業間の競争、新規参入、代替品、買い手、売り手の五つから調べる枠組みです。自社の強みを採点する表ではなく、どの関係で価格や費用が左右されるかを理解するために使います。
Michael Porterによる枠組みの概要はHarvard Business Schoolの説明で確認できます。まず業界の範囲を定義し、その範囲にいる買い手・供給者・代替案を特定します。
最初に業界の範囲を決める
「IT業界」のような広い範囲では、関係者も価格形成も異なります。ここでは「日本の小規模製造業向け作業報告ソフト」を仮の範囲にします。対象地域、用途、顧客規模、調査時点を記載してください。以下の青葉ツールの例は架空であり、市場の強弱を調査した結果ではありません。
業界の外から同じ仕事を解決するものが代替です。この例なら、別の報告ソフトは直接競合、表計算や外注で同じ目的を満たす方法は代替候補となります。範囲を変えれば区分も変わるため、何を含めたかが重要です。
五つの圧力を証拠で確認する
要因 | 確認する問い | 集める根拠 |
|---|---|---|
既存競争 | 何をめぐって競争し、値引きや費用が増えるか | 提案比較、料金・契約、失注理由 |
新規参入 | 同じ市場へ入るための障壁は何か | 開発、販売接点、信頼、規制・契約 |
代替 | 別の方法で同じ目的を満たせるか | 現行業務、移行費用、利用者の判断 |
買い手の交渉力 | 切替や相見積で条件を動かせるか | 顧客集中、切替費、調達条件 |
売り手の交渉力 | 必須の資源の供給者に依存するか | 契約、代替供給者、移行時間・費用 |
「競合が20社以上なら強い」「上位企業で50%なら弱い」のような一律基準だけでは判断できません。数が同じでも、差別化、切替、成長、固定費、顧客集中などによって圧力が変わります。
架空の記入例を戦略に変える
仮説 | 強弱を決める前に調べること | 対応候補 |
|---|---|---|
顧客は表計算を続けやすい | 不便さと変更負担のどちらが大きいか | 移行支援を小さく試す |
価格比較になりやすい | 比較される機能と支援範囲 | 適用範囲と支援内容を明示 |
特定の基盤へ依存する | 料金変更、データ移行、代替性 | 契約確認と移行可能性の点検 |
大口顧客へ売上が集中 | 失注・値下げ時の影響 | 対象顧客と契約を分散検討 |
ここで「圧力が強いから撤退」と直結させません。対象を絞る、支援を標準化する、依存を減らすなど、自社が実行できる選択肢を検討します。魅力的な業界でも、自社の提供能力や費用が合わなければ採算は成立しません。
点数を使うなら根拠と不確実性を併記する
会議で強・中・弱を付ける場合は、結論の隣に証拠、確認日、未確認事項を書きます。数字の平均を業界の正確な収益率とみなさないでください。根拠がない項目は「弱」ではなく「未確認」です。
異なる顧客層では買い手の力が違う場合があります。大企業向けと小規模企業向けが同じ表で判断しにくいなら、範囲を分けて比較します。将来の変化も、確定した事実とシナリオを分離します。
3C・SWOTと使い分ける
枠組み | 主に扱うもの | 今回の分析から渡す情報 |
|---|---|---|
ファイブフォース | 業界構造と利益への圧力 | 交渉・代替・依存の条件 |
3C | 顧客・競合・自社の状況 | 顧客の選択と自社の能力 |
SWOT | 内外の要因の整理 | 根拠のある機会・脅威等 |
記入シートは、範囲__/五つの要因__/根拠・日付__/利益に影響する経路__/未確認事項__/対応案__/担当・期限__です。
仕入条件、技術、顧客の購買方法、競合の販売モデルが変わったときに見直します。分析の完成より、意思決定に重要な仮説を一つ検証することを次の行動にしてください。
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出典・確認先
公開資料の確認日:2026年10月1日。本文の記入例・試算は、明記したものを除き編集部が作成した説明用の例です。


